最終更新日 1999年12月21日

【特集・川で遊ぶ】カヌーの里/日野町
日野川で思いっきりカヌー 

大山王国 特集 川で遊ぶ

リバーカヤックに乗って水上散歩

一度でも体験すると、その素晴らしい世界のとりこになるといわれるカヌー。子どもは大いなる冒険におとなになりおとなは川遊びを思い出して子どもに帰る。いつのまにか自然とひとつになって、心地よい浮遊感にハマッていた。

中: 坪倉寿樹さん
カヌー歴5年、米子カヌークラブ会員。元旦からカヌーに乗るほどのカヌー好き。日野町勤務。
美しい日野川を見ていると、自然を守りたいという気持ちがわいてくる。
右: 田村香理さん
ドライブとカラオケが大好きな20歳。毎年、大山登山をするスポーツ派でもある。看護婦をめざしている。
左: 橋尾礼子さん
食べ歩きにはまっている21歳。水泳、とくに遠泳が得意。田村さんと同じく看護婦の勉強に励んでいる。

初心者でも安心
川は浅く岩が多いため、リバーカヤックではヘルメットの着用が必要だ

 

カヌーの里
カヌーを楽しむために護岸整備がなされた「カヌーの里」。車では米子自動車道江府インターチェンジより、国道181号を根雨方面へ向かって約15分。
周辺には「リバーサイドひの」があり、食事や宿泊もできる

せせらぎの水辺施設休憩所
トイレ、シャワー、炊事場、カヌー倉庫がある。
赤松池カヌー教室
大山周辺では大山町にある赤松池でもカヌー教室が行われている。

鳥取県の三大河川のひとつに数えられる美しい日野川。オシドリが棲む町としても知られる日野町には、その日野川を舞台にした「カヌーの里」がある。ここでカヌーに初挑戦したのは、田村香理さんと橋尾礼子さん。
「カヌーはセルフレスキューが基本です。川に出たら一人。自分の命は自分で守るしかありません」

カヌーの達人、坪倉寿樹さんの言葉に身を引きしめて、ライフジャケットとヘルメットを身につける。まずは水をかぐ道具のパドルの持ち方や使い方を教わり、岸辺で簡単な練習をする。
「ともかく、まず乗ってみましょうか」

もっと説明があるかと思っていたが、ストロークの練習が終わるやいなや坪倉さんがカヤックを川に浮かべた。
「えっ、もう乗るんですか」と、二人とも不安そうだ。沈する姿が頭に浮かぶが、川に浮かんだカヤックと岸をパドルで橋渡しして、やっとのことで乗り込む。
「パドルで軽く岸を押して」と言われ、ひきつった表情になる橋尾さん。ともかくカヤックはぎごちない二人を乗せて、日野川へと乗り出していった。

アザラシを狩猟するカヤック、ビーバーの毛皮を積んだカヌー

「カヌーと一言にいっても、その種類はさまざま。キャンプや激流下りなど、乗る目的によって形や構造が違います。競技カヌーにはスラローム、ロデオ、ワイルド・ウォーターといった種目があって、それぞれにテクニックも違っているんですよ。じつに奥が深いものなんです」

カヌーはおおまかにいうと、カナディアンカヌーとカヤックに大別される。カナディアンカヌーはデッキがオープンになっていて、ひざ立ちや正座で乗り、水をかぐ櫂が片側だけについたパドルを使って漕ぐ。かつてビーバーの毛皮の運搬に使われていたそうだ。

一方、カヤックは足を伸ばして乗り、両側に櫂がついたパドルを使って漕ぐ。もともと極寒の地に住むイヌイットたちが海獣を捕獲するために乗っていた舟で、そのルーツは四千年ほど前にさかのぼるという。

日本ではカヌーもカヤックもひとまとめにして「カヌー」と呼ばれているが、アメリカやカナダではきちんと分けられているので気をつけたい。北米を旅するとき、カヤックに乗ろうと思って「カヌーに乗りたい」というと、カナディアンカヌーが登場なんて目に合うからだ。

坪倉さんが選んでくれたのは、二人が初めてということもあり、リバーカヤックのなかでも安定性と直進性にすぐれたファンカヤック。幅が広くて、どっしりとした感じだ。まったくの初心者でも扱いやすい、というのだが・・・・・。

陸から眺めるのとはまったく別の風景が広がっていた

パドルの動きがぎこちない。肩に力が入って、ぎくしゃくしている。水面のかきが浅いために、なかなか前に進めないようだ。橋尾さんは流れに逆らって漕いでいるつもりが、まるでカヤックが止まっているように見える。
「しっかり漕いで!」。田村さんは、ストーロークが遅いためにカヤックの方向が定まらないらしい。あっちの岸辺に漂着。こっちの岩にゴッツン。達人が二人のそばに漕いでいっては指導をする。ちょうど遊びにきていた坪倉さんのカヤック仲間も参加して、ひとしきり二人にアドバイスの声が飛んだ。
「漕ぐのをやめて、川の流れにのってみましょう」

ひとあばれして集中力の途切れるころを見はからい、坪倉さんが手を休めた。二人もストーロークをやめて、日野川の流れに身をまかせた。さっきまであたふたとしていた川が、不思議なほどおだやかな表情になる。静かに時間だけが流れていく。

日野川は四季はもちろん、一日のなかでも景色の変化があるという。毎週のように来ていても、同じ風景はないと坪倉さんは言う。「川のやさしさや繊細な感じが伝わってきたり、鳥の声が聞こえたり。川から見ることで自然をすごく身近に感じられるんですよ」

ひと昔前、川は子どもたちの遊び場だった。魚やザリガニを追いかけ、青空の下で泳ぎをおぼえ、一日中、夢中になれる場所だった。びしょぬれになって、時間を忘れて遊んでいたのに、いつから遠ざかってしまったのだろうか。

三十分も漕げば、からだが覚えてくれる

「さぁ、もうひと漕ぎしましょうか」と坪倉さんの声が聞こえた。二人の顔がほころんだ。腕の動きがかなりスムーズになってきている。少しずつ、思った方向に進めるようになっているようだ。グイッという感じで、上流に進んでいく。カヤックの方向を変えるストロークもなかなかのものだ。
 出発点の岸辺に着いた頃には、すっかり落ち着いたようすでゴール。田村さんは、心なしか岸に上がるのが残念そうに見える。まずは、実際に乗ってみるのがいちばん。見よう見まねで漕いでいるうちに、自然にコツがわかってくる。頭よりからだで覚える。それが、達人が伝授してくれた極意というわけだ。
「川の景色がすごく違う。こんな川だったのかって感じ。岸の草むらにウサギがいるのを見たよ」
「うん、川をこんなに近くから見たことないよね。今度はもっと長い距離を漕いでみたい。もう少し流れのある急流で、スリルも味わってみたい」
生まれて初めて乗ってから、まだ三十分も経っていないというのに二人とも、もうとりこになっている。
「いつか自分でカヌーを作って、家族と一緒にのんびりとツーリングするのが夢です」

坪倉さんが子どものように目を細めて笑った。カヌーはいい。大人になっても夢中になれる川遊びを体験させてくれた日野川が、おだやかな顔で流れていた。

■お問合せ 日野町教育委員会 TEL0859-72-2107
■期間 4月〜10月 (気象状況により変更)
■料金 カヌー 艇1000円(1日使用)
  休息所100〜200円(1時間)
■その他 使用に際しては指定の申込書の提出と、使用する団体内でカヌー指導者がいること。カヌー教室については予約が必要。

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